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ノベルNo.1「10(第十五回)」

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とにかく、今は何も考えたくなくなった!
とにかく、彼女を!キヨミを探したい!
三晩寝続けてうまく動かない体を懸命に動かして、
塞ぎ始まった傷口は気にしていられない。
幸いにして、キヨミは案外近くにいた。
病室と同じ階にある雑談室で窓を開けて、外を眺めていた。

「キヨミ・・・。」

「ねぇ・・・もう少ししたら太陽が沈むね。
陽が落ちるのがすっかり早くなったよね。」

陽が落ちていくのと同じくして、少し声の調子は落ちていたが、
何事もなかったかのように、キヨミは私に話しかけてきた。

「あの・・・ごめん。」

「あのさ、太陽が沈んだら月が街を照らしだすんだよ」

「なんだか、俺・・・」

「でも、月は太陽が無いと輝けないんでしょう・・・」


「さっきはどうにかなって・・・」

「月はね、自分自身では何も出来ないと思っているのよ。
太陽が無いと輝く事も出来ないって。だけど、本当はね、
しっかり、力を持っているのよ、月は地球にしっかり重力という
影響を及ぼしているの。それは地球にとってはとても大切な
力なのに、自分では気付かない。太陽の力を使って輝く事が、
自分の力だと思ってる。」

「え・・・。」

「ならば、私は太陽になりたい!!
月が自分らしさに気付くまで!ずっと照らしてあげたい!!」

「キヨミ・・・。」

そうだ、私は何を悩んでいたんだろう。
“10分間”というのは、確かに私に取っては、
当たり前の事だった。しかし、その前に私は一人の人間。
やっと、人間として、スタートラインに立てたのだ。

看護婦に私の船を壊され、そして今キヨミに
新しい舟を作るきっかけを与えられた。
壊れたらまた新しく作ればよかったなんて。
そう思うと一気に波が押し寄せてくる。
潮が満ちてきたのか、これが“月”の力。
それでも元々言葉少なめな私は

「キヨミ・・・ありがとう。」

キヨミは夕暮れにしては眩しい笑顔で私に明るい言葉を
掛けようとしたが、私は無意識にキヨミの口を塞いでいた。

そして、少し人目は気になることもあったが、無言で抱きしめた。

10分・・・15分・・・
もう時間なんて気にならなくなった。

10分間ではなくても、今ここに実感できる幸せがある。
少し前に辛い思いをし、キヨミにも迷惑を掛けてしまったけど。
谷の方向ではあるが、思い出になる。
プロフィール

アキヒサナウ

Author:アキヒサナウ
かっこよくはなれません。

が、かっこつけます。

が、かっこつけたら、

ふざけます。

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